いま、文豪本と言われるジャンル?がブームとなっている。
「文豪」と検索すると、「文豪ストレイドッグス」や「文豪とアルケミスト」が検索の上位に出てしまうほどである。
とはいえ、文豪と言われる人物たちの作品を実際に読むのは大変である。
そこで、まずは文豪に親しみを持てるように、人柄などに注目した書籍も多く出ている。
本書は、文豪たちがどんな悪口や喧嘩をしていたかという、堅いイメージを壊す一冊である。
文豪は喧嘩っ早い!?
太宰治が芥川賞の選考で川端康成に私生活まで非難されたことで、仲が悪かったのは有名な話だ。
また、一時ネットでは中原中也に怯える太宰治とのやり取りも話題になっていた。
当時の文豪たちは新聞や雑誌の誌面に残す形で、大っぴらに喧嘩をしていた。
そのため、現在にも多くのやり取りが残されており、誰と誰が仲が悪いだの、どのような暴言を吐いているだのを窺い知れる本書は面白い。
表紙を見るだけでも「なんだ、おめえは。青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって」「悪むべきは菊池寛の如き売文専業の徒のなす所なり」「刺す」などある。
中を読むと、太宰は繊細で気弱なイメージとは裏腹に口はかなり達者なようで、13ページにわたって志賀直哉に対して恨み辛みを綴っている。
また、永井荷風は菊池寛嫌いが相当なようで、『断腸亭日乗』という日記で1925年から1943年もの間、事あるごとに菊池寛への悪口を書いている。
よくもそれだけ長い間、恨みが続くものである。
このように、タイトルに偽りなく見事なまでに文豪たちの罵詈雑言が掲載されている。
しかし、軽く読める一方で、もう少し詳細なエピソードや人間関係にページを割いてあると、より文豪たちに興味を持つ人が増える気がした。
漱石全集からも引用されており、我が家にも漱石全集が揃っているので、いつか引用された周辺も全部読んでみたいと思う。
・書籍情報
『文豪たちの悪口本』
彩図社文芸部編(彩図社)