社会学、現代思想に触れると必ずぶつかるのが、ポストモダニズムから始まり、訳がわからない用語が散りばめられた論法。興味はあるが敬遠をしていた分野である。
最近、とある人と話している中で、日常と非日常が曖昧になっていく現象について「シミュラークル」という用語、ボードリヤールの『消費社会の神話と構造』という本を教わった。
ボードリヤールに関して検索してみると、「堤清二が『消費社会の神話と構造』に触発されて無印良品を始めた」や「マトリックスは『シミュラークルとシミュレーション』を意識して作られた」など興味深い話がたくさん出てくる。
現代思想に触れる導入として適切なのかはわからないが、まずはボードリヤールに関する書籍をいくつか読んでみることにした。
ガイドブックとはいえ一筋縄ではいかない
まず、本シリーズの特徴に、このように書いてある。
「現代思想の簡潔で明解、かつ本格的なガイドブック。入門書の決定版です。」
「本書は、最初の著書からその後のポストモダンのテクストにいたるまで、ボードリヤールの仕事の全容へと読者を導くものである。」
「そこでは、ボードリヤールによるマルクス主義再考の試みから、テクノロジー、プリミティヴィズム、シミュレーションとハイパーリアル、アメリカとポストモダンに関する彼の理論を紹介される。」
これだけ読むと、上記のボードリヤールの理論が著作順に明解に解説されているように読める。前提知識なしでも行けるかなと。
ところが、やはり現代思想は難解である。
たびたび用語の解説欄があり、丁寧に字面を追って、たまにWikipediaなどで調べれば何となく読み通すことはできる。
こうして「訳者あとがき」まで辿り着くと、下記のようの解説が。
本書に限っていえば、「入門書」という性格づけにはかなりの留保が必要なようだ。というのも、著者はボードリヤールの生涯と著作のひかえめな紹介者の立場を越えて、むしろボードリヤールの思想への(こういってよければ)本質的な批判を展開しているからである。
そうなのだ。
一通りボードリヤールの著作を追って理論を紹介しているのだが、そこには他の現代思想家との関係性や批判に繋がるような構成になっており、必然として前提知識がなければ理解できない。
この「訳者あとがき」は、最終的に訳者自身の『ボードリヤールの生きかた』という書籍紹介に誘導されている。
ただ、他にボードリヤール論についての書籍も見当たらないし、訳者はボードリヤールに関する多くの書籍の翻訳をしている専門家である。
これは、一度手に入れて読んでみるべきだろうか。