書評・読書記録

『内閣情報調査室 公安警察、公安調査庁との三つ巴の闘い』を読みました。

公安と聞くと、特別な権限を持ったスパイ、どちらかと言うとドラマやゲームの世界の方が耳にする言葉かもしれない。

たまに公安が関わるニュースを目にすることはあっても、事件の内容がメインで公安とは何かまで掘り下げることは少ない。

電子書籍のセールで、何となく前々から気になっていたものを知るには絶好の書籍だと思い、購入してみた。

公安とは

一口に「公安」といっても、公安は2つある。

一つは、お馴染みの「公安警察」で、もう一つは「公安調査庁」である。

公安警察は、警察庁警備局の管轄にあり、「国益に関わる組織犯罪を摘発する」ことが目的である。東京の警視庁公安部では9つの部を要し、1100人の公安警察官を擁している。

一方、公安調査庁は、法務省の外局に位置し、1952年に破壊活動防止法を執行する行政機関として、主に極左暴力集団の活動を監視するために誕生した。公安警察との違いは、強制捜査権を持たない事にある。

それでは、タイトルの「内閣情報調査室」とは何か。

内閣情報調査室のルーツは、公安調査庁と同じ1952年に内閣直属の情報機関として、吉田総理の元で内閣総理大臣官房調査室が設置された。いわゆる日本版CIAとしての構想があった。

その後、内閣情報調査室と変え、現在は総務部門、国内部門、国際部門、経済部門、内閣情報集約センター、内閣衛星情報センターの4部門・2センターを置いている。

つまり日本には、いわゆるスパイ組織が3つあるのだ。

そして、この3つの組織は、事案によって競合してしまうという問題も抱えている。

日本のスパイ活動

公安警察

公安警察の情報捜査には「追尾」「秘撮」「秘聴」「視察拠点設置」があるが、最も行われている情報収集活動は「対象組織に協力者を獲得する」事だという。

ドラマやゲームなどで見る潜入捜査には触れられていないため、一般的な手法ではないのかもしれない。

公安調査庁

公安調査官は、先ほど述べた通り、強制力の伴う捜査はできない。そこで重視されるのが、人から得る情報「ヒューミント」である。

協力者工作に重点を置くのは公安警察と同じだが、調査官は身分を明かす事が多いことと、収集された情報は本庁の分析官によってスクリーニングされる点が違うという。

公安調査庁は、成り立ちが破防法の対象団体への執行のため、近年は対象団体自体が衰退気味のため、今後の役割が減っていく推測がされている。

内閣情報調査室

内閣情報調査室、「内調スパイ」に採用されると、まず情報集手法を徹底的に叩き込まれるという。

その方法は、「公刊情報の収集」である。

新聞・テレビ・雑誌・ネットなど一般人も入手可能な情報を拾い上げ、そこから独自の情報ルートでさらに深い情報を得る。

公開情報で何がわかるのかというと、実はその分析方法によっては、かなり深いところまで情報を得ることができる。これは「オープン・ソース・インテリジェンス(open-source intelligence)」、通称「OSINT」と呼ばれ、諜報活動の基本的な事なのである。

OSINTは情報機関だけの技術ではない

少し話が脱線するが、下記の記事を読んでみてほしい。

文春オンライン:「世界一面白いゲームだ」ネット情報から事件の真相に迫るデジタルハンターの素顔とは

内容は、NHKBS1スペシャル「デジタルハンター〜謎のネット調査集団を追う〜」を視聴した記事である。

この集団は、SNSの虐殺動画から、その場所を地図ソフトによる地形の照合、太陽の位置と影の長さ、どこ製の銃まで突き止めている。

このように、公開情報は、今では情報機関だけでなく、誰しもが利用でき真実を追える可能性があるものだ。それだけに、この公開情報の重要性は高まっているのである。

まとめ

ここで触れたのは、あくまで公安と内閣情報調査室という日本の情報機関の表面的な概要だけである。

本書では、公安や内閣情報調査室が実際に関わった事件について触れられている。

中には記憶にあるニュースや有名な事件もあり、多くの重要な事件やその裏に情報機関が関わっているのがわかる。

日本の公安や内閣情報調査室が、どれだけ平和を支えているか、気になる人は一読を。




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