書評・読書記録

【心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」】を読みました。

閉塞感が増す時代の生きる力として、自分の心の情況といかに向き合うかが書かれた2010年に出版された新書。 当時は、2008年リーマンショック、2009年民主党政権誕生など目まぐるしく変動する先行きも不透明な時代だった。

奇しくも現在コロナによる自粛で不安と閉塞感が増し、多くの人がストレスを抱えている。

内に向いた心の負担を減らし、少しでもコントロールできるように意識させてくれる一冊である。

著者紹介

精神科医で大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科緊急救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。テレビのコメンテーターとしても活躍しており、メディアで目にする機会がある人も多いかと思う。

鬱に向かわないために気をつける3つのポイント

鬱になりやすい傾向として、人生の指針や拠り所がない状態が挙げられる。

海外だと宗教がそのような役目を果たしているが、日本では宗教性が薄いため人生哲学というものが希薄である。固執しないというメリットがある一方、人生観が揺らぐような事態に弱いデメリットがある。

そこで本書から、身近にできる鬱に向かわないために気をつける3つのポイントを取り上げたいと思う。

小さな「積み重ね」

鬱に対しては気付きが重要だと述べている。

鬱の人は、心が結構激しく揺れ動いている人が多いですね。その混乱を整理するためには、自分の心の状態をこまめに捉えて、その度にちょっと正しい軌道に戻してやることが、かなり有効なんですね。

そのためにも「自分の心はどういう状態にあるのか」ということを、「今、ここ」の現場で気づくという経験が一番大事なんですよ。まずは意識化、自覚の大切さを頭で理解してもらって、あとは現場でひとつひとつ実践してもらう。

こうやって、ちょこちょここまめに経験値を上げていけばいくほど、自分の心のメンテナンスを自分でやれるようになってくると思います。

知らず知らずのうちにストレスを抱え沈んでしまう事は避けなければならない。

そのためには、嫌なことがあれば「鬱だー!」と大声で叫んでも良いし、「鬱だから贅沢しよう!」と言い訳気味にでも正しい軌道に戻すきっかけを作ることが大切なのではないか。

小さな「集中力」

それでは「今、ここ」という精神状態を気がつく方法はどのようにすれば良いのだろうか。

その困難を可能にするのは、おそらく集中力というものなんですね。「今、ここ」の状態を冷静に見つめられる集中力が身につけば、自分の頭、そして自分の心をかなりのところセルフコントロールすることができるはずなんです。

人は多くのことを習慣で無意識に行動し、いわば自動操縦できるようになっている。

自動操縦のせいで、集中する能力が鍛えられない。だから、目の前のことをこなしながらも、その合間には様々な空想やイメージが差し挟まれてゆきます。知らず知らずのうちに、エネルギーが浪費されてしまう。その中には、ずいぶんとネガティブな思考や感情も含まれているので、ちょっと比喩的な言い方をすると、「無意識に自分を傷つけていく」んです。

これを回避するために「目の前のことを意識して行動する」「ほんの少し意識的に集中して切り替える」ようなことが重要なのだ。

小さな「開き直り」

そして、完全に絶望な状態はどん底から這い上がれるのに対し、自分で絶望的だと思い込む状態は危険だと述べている。そして絶望的というのは、どこかで希望を持っているのが厄介なのだ。

どれもこれもうまくいきそうにない。あるいは、うまくいきそうでも、それを実行すると、誰かにまた迷惑をかけるとか、自分の卑屈さがありありと見えてくるとか、そういったイメージや感情が伴って出て来るので、またぐっと苦しくなったり辛くなったりするんです。

わずかな希望と絶望的な状況を無限のループしている精神を鬱だと言える。

希望の仮面を巧妙にかぶった「迷い」の思考に囚われ出すと、もういけません。もう、いくらでもいくらでも、それこそ心の闇から真っ黒い偽の希望が噴出してくるんです。

そして、心はどんどんと暗い増長を始めて、その分、心の比重が増し、怒りや不安ばかりで満たされていきます。周囲の状況が恐ろしくなり、周りの人が敵に見えたり、鬼に見えてきたりすることだってあります。当然孤立し、孤独になっていきます。

そこで、偽の希望を捨てた小さな「開き直り」が大事になるのだ。

小さな「開き直り」は無敵の人になれという事ではない。今ある絶望から抜け出すため、未知の新たな外部に一歩踏み出す勇気を持てという事である。

見栄やプライドを気にして上手くいかないなら捨ててみる。

損失を抱え続けるなら早めに損切りをする。

少しの勇気で傷口を小さくすれば、何度でも立ち上がるチャンスはあるのだ。

おわりに

本書を読んでみて知らないうちに自分も似たような事をやっていたのに気が付いた。

私は考えることが好きだが、ふとグルグルと同じことを考えたり、ドツボにハマることがある。そういう時に、サウナに行って頭を空っぽにして切り替えたり、気分転換にパズルなどをする趣味をするのは小さな「積み重ね」や「集中力」につながる。

人生なんて上手くいかないことばかりである。

それでも何度も切り替えて立ち上がることで、きっといつかは上手くいくと信じて生きていれば、それが挑戦する楽しみにも繋がるのではないかと、ふと思った。

・書籍情報
心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」
名越康文(
角川SSC新書)




-書評・読書記録

© 2020 takefive Powered by AFFINGER5