法人税

事前確定届出給与を支給しなかった場合

前回は、役員の賞与・ボーナスとして利用できる事前確定届出給与について紹介しました。これで役員も従業員と同様に賞与を支給することができます。

しかし、これには一つ問題があります。

事前確定届出給与通りに賞与を支給できなかった場合は、どうなるのでしょうか。

場合によっては損金の額に算入できない金額もあります。

3つのパターンを紹介するので参考にしてみてください。

記載した金額通りに支給しなかった場合

事前確定届出給与に記載した金額が100万円で、実際に支払った金額が50万円の場合、50万円の全額が損金不算入となります。

2回支給する定めとした場合には、2回とも届出額を支払わないと2回分全額が損金不算入となるので注意しましょう。

ただし、この時に一定の条件に当てはまれば、損金の額に算入できる方法もあります。

それは3つ目に紹介します。

記載した金額を全く支給しなかった場合

役員賞与を全く支給しないので、そもそも損金不算入とする金額がありません。

ところが、役員報酬は株主総会等で支給することが決議されると、支給日以後には役員に報酬請求権というものが発生し、会社には報酬を支給する債務が生じます。

支給日以後に株主総会等で不支給の決議や役員からの辞退届があった場合には、すでに役員に報酬請求権が発生してしまっているので原則として源泉徴収が必要となるので注意が必要です。

(給与等の受領を辞退した場合)

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給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

そのため、事前確定届出給与の支払いが無理そうならば、支給日前に速やかに株主総会等で不支給の決議をしましょう。

支給額を変更する場合

事前確定通りに支給はできないけど、不支給にするほどでもない場合、何か手はないのでしょうか。

次に掲げる変更の事由の区分に応じて、それぞれ次に掲げる日までに事前確定届出給与に関する変更届出書を提出することで、事前確定届出給与を変更することができます。

①臨時改定事由

役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事由が生じた場合

提出期限:当該臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日

②業績悪化改定事由

法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する事由が生じた場合

提出期限:当該業績悪化改定事由により、その定めの内容の変更に関する株主総会等の決議をした日から1月を経過する日(ただし当該1月前に変更前の届出の定めに基づく給与の支給日が到来する場合には、当該支給日の前日)

 

①の場合は、昇格でも降格でも該当します。

②の場合は、最近だとコロナによる業績悪化も該当するでしょう。

まとめ

事前確定届出給与は、全く支給しない場合であろうと、業績悪化事由で減額するにしろ、株主総会等の決議をする必要があります。

でないと、源泉徴収義務が発生したり、損金の額に算入できない金額が発生してしまいます。

役員報酬の規定は、恣意的な利益操作を避けるために、経営者には先を見通す能力が求められます。それでも経営には不足の事態は起こるものなので、損金不算入にならないように、しっかりと対処しましょう。




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