国税不服審判所、2013.07.26裁決において、ゆうメールによる申告書の提出は郵送によるものではないと裁決がされました。
一般的に、会社で働いていると郵送を利用する事は多いですが、実は申告書も宅配ではなく郵便が一般的です。
今回は「何故、申告書は郵便でなければダメなのか」「信書とは何か?」を学びたいと思います。
申告書は必ず郵便または信書便で!
事案の概要
課税庁は納税者に対し、いわゆる「ゆうメール」により提出された平成23年分の所得税の確定申告書が法定申告期限内に到達しなかったとして、無申告加算税の賦課決定処分を行った。
これに対し、納税者は国税通則法第22条《郵送等に係る納税申告書等の提出時期》により、当該確定申告書は法定申告期限内に提出されたものとみなされるとして、その全部の取消しを求めた事案である。
争点
ゆうメールは、通則法22条が適用される郵便物に該当するか否か
各自の主張
納税者
- 通則法は「郵便物」に定義がない。
- 一般国民に郵便法だの通則法だの求める方がおかしい
- 遅れたって仕方ないじゃないか!
課税庁
- 租税法が私法上の概念を特段の定義なく用いている場合には、私法上の概念と同じ意義に解すること妥当なのです。
- ゆうメールは、ポスパケット約款ってのあって荷物扱いなの。わかる?
- 通信日付印は郵便又は信書便って通則法22条に書いてあるだろ。
結論
さて、問題の通則法22条を見てみましょう。
納税申告書その他国税庁長官が定める書類が郵便又は信書便により提出された場合には、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日にその提出がされたものとみなす。(括弧内省略)
なお、国税庁のサイトには以下のように書いてあります。
税務上の申告書や申請書・届出書は「信書」に当たることから、税務署に送付する場合には、「郵便物」(第一種郵便物)又は「信書便物」として送付する必要があります。(郵便物・信書便物以外の荷物扱いで送付することはできません。)
申告書を、郵便又は信書便を利用し税務署に送付された場合、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日を提出日とみなすこととなりますが、それ以外の場合には、税務署に到達した日が提出日となります。
書いてあるじゃん・・・
申告書は「信書」に該当する
→信書は郵便又は信書便で送らなければならない
→郵便又は信書便の場合は、通信日付印の日とみなす
どうみても課税庁の言うとおりです。お疲れ様でした。
詳しい内容は「国税不服審判所、2013.07.26裁決」へ。
納税者の主張は、「郵便又は信書便」ではなくて「郵便物」の文字の定義にこだわる完全な言いがかりですよね。
確かに、税法訴訟において用語の定義や解釈というのは時として重大な意味を持ちますが、今回の場合は争う事案なのでしょうか。
正直、「え、何でこんなので審査請求してんの?」ってレベルなんですが、面白いから取り上げてみました。
ただ、「租税法が私法上の概念を特段の定義なく用いている場合には、私法上の概念と同じ意義に解する」というキーワードは大学院などで税法を学ぶ上でも知っておいたほうが良いです。
さて、さらっと流しましたが実は今回の事例には税法とは別にもう一つ重大な問題が隠されているのです・・・忘れているかもしれませんが、タイトルを思い出してください。
それでは「信書とは何か?」「郵便又は信書便」でなければいけない理由は、さらに長くなるので次回にしたいと思います。