近年、法人の接待交際費について毎年のように改正が行われています。
しかし、個人事業主について接待交際費はどのように取り扱えば良いのでしょうか?
多くの人が気になる個人事業主の必要経費について、法人の接待交際費と比較して検討してみましょう。
法人と個人事業主では違う!?接待交際費とは。
法人の接待交際費
昨年は、平成25年4月1日以後開始事業年度について、中小法人は定額控除限度額が年800万円に拡大されるとともに、定額控除限度額に達するまでの金額の損金不算入額が0とされました。
今年は、平成26年4月1日以後開始事業年度について、接待飲食費の50%相当額が損金算入可能になります。
これは景気浮揚を期待して飲食費などを経費として計上できるようにしたものとなっていると考えられます。
このように法人の接待交際費については、毎年のように改正があり注目される事が多いものです。
それでは、接待交際費とは一体何を指しているのでしょうか?
接待交際費の意義
接待交際費は租税特別措置法61条の4に以下のように規定されています。
交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの
そして、福利厚生費や会議費にあたるものや、1人当たり5,000円以下の一定の飲食費が除かれています。
赤い文字をよく見てください。
対象が法人と限定されているのです。
それでは、個人事業主は何が接待交際費に当たるのか?
フリーランスや個人の経理をしている方、わかりますか?
※ 今回は個人にスポットを当てるため、法人の細かい接待交際費の内容については割愛しますが、法人の接待交際費については要望が多いと思うので後日取り上げたいと思います。
個人事業主の接待交際費
実は個人事業主については、所得税法に交際費の意義はありません。
個人事業主の計算は、所得税法27条2項に以下のように記載されています。
事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。
そして、必要経費の意義が所得税法37条にあります。
その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする。
カッコ書き省略
したがって、必要経費とは「事業を行うにあたって直接要した及び生じた費用」という事が出来るでしょう。
個人事業主は何でも経費に出来るのか?
それでは「事業を行うにあたって直接要した及び生じた費用」というものは、どのような範囲のものが含まれるのでしょうか。
仕入や賃貸料や備品などは当然に費用になります。
必ず事業をするために支出する費用については問題ないでしょう。
自宅で開業した場合
問題となるのは自宅で開業した場合の経費の計上の仕方です。
このように自宅兼職場として利用され、混合された費用は「家事関連費」と呼ばれて、次のように規定されています。
所得税法施行令(家事関連費)
第96条 法第45条第1項第1号 (必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。1 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
2 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費
「家事関連費の主たる部分が業務に必要か」にも定義がされています。
所得税基本通達(業務の遂行上必要な部分)
45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
これを組み合わせて読むと、家事上の経費に関連する経費は
- 「業務遂行上必要な部分が50%を超え、必要である部分が明らかに区分されている場合」
- 「50%以下であっても必要である部分を明らかに区分することができる場合」
その部分を必要経費と認めることができるとなります。
極論、業務遂行上必要な部分が明確に区分できていれば、家事関連費も費用にすることができると言えるでしょう。
具体的な区分
1.家賃等
家賃については事業で使用部分を明確にした面積按分が必要となります。
適当な割合で「リビングスペースを商談に使ってるから」などと考えず、きちんと仕事用の机や相談スペースを確保して、按分計算を行うべきです。
2.水道光熱費等
面積按分か使用時間按分が良いでしょう。
ただ、業務上ほとんど水道やガスを使わない場合には計上しない方が無難かもしれません。
電気代については、営業時間で按分しても問題ないでしょう。
3.通信費
通信費について、電話もインターネットも仕事とプライベートが兼用ならば営業時間で按分しても良いでしょう。
事業遂行上必要な交際費の区分は?
さて、個人事業主の経費について家事関連費も含めて勉強しました。
本題に戻ります。
上記を踏まえて、個人事業主の接待交際費はどこまで認められるか?
残念ながら・・・
これが正解という基準はありません。
節税対策の書籍を読むと、取引先との飲食やゴルフ・旅行など当たり前のことしか書いてありません。
しかし、当たり前と思っていても、度が過ぎる接待の回数の場合は否認されることもあります。
また、業務の遂行上は必要な付き合いであっても、取引とつながらないという理由で否認されることもあります。
経費の意味を説明できるようにする。
これだからオッケーという判断ではなく、自分で業務の遂行上必要な付き合いであると説明ができるものを計上することが一番の対策です。
さっき、「取引と繋がらないという理由で否認されることもある」と言ったじゃないか!
なんて声も聞こえますが・・・
さらなる対策として、確実に業務遂行上&取引に繋がる支出でない場合、家事関連費として扱い一部を自主的にカットする方法もあります。
いちいち接待の重要度や業務関連割合によって全額落としたり一部カットしたりは面倒くさいかもしれません。
しかし、誠実な対応を取り説明責任を果たせることが一番の節税対策です。
したがって、経費となる理由をしっかりと理解した上で、使えるものは出来る限り経費に計上して節税に勤めるのが良いでしょう。