下町の本当に小規模な工場は、家族だけで経営しているところも多いものです。
そうすると帳簿上に福利厚生費として慰安旅行が上がっている場合、どのように処理をして良いか判断に迷うところがあると思います。
今回は、同族会社における家族慰安旅行は経費になるかについて調べてみました。
福利厚生の指針と具体的事案
国税庁による指針
社員旅行については下記のような指針が国税庁から出ています。
従業員レクリエーション旅行の場合は、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次のいずれの要件も満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。
(1) 旅行の期間が4泊5日以内であること。
海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。(2) 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要です。https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2603.htm
通常は4泊5日以内で参加人数が50%以上ならば、給与でなく福利厚生費として判断して良いのが前提です。
もし、社長が愛人と2人で旅行に行ったら当然アウトです(笑)
あと、景気が良いからって1週間以上の旅行もアウトですね。
家族経営の場合、上記2つの条件はクリアしなければならないでしょう。
それでは、他にどのような点に気をつければ良いのでしょうか。
家族4人での旅行を社員旅行とした裁決事例
例えば、(平成3年11月19日裁決)では、次のように判断しています。
請求人は、本件慰安旅行費用のうち、請求人及び事業専従者である配偶者に要した費用は、従業員等のレクリェーション費用として必要経費の額に算入される旨主張するが、
[1]本件旅行は、家族4人のみで毎年8月に、配偶者及び子女の都合・希望を聞いて実施されており、サラリーマン家庭が行う通常の家族旅行と何ら異なる点は認められないこと及び
[2]本件以外にも同様の旅行を実施しているのに、本件旅行費用のみ必要経費になるとした理由も明らかでないことから、本件旅行は、他の企業が実施している従業員のための慰安旅行と変わらないという請求人の主観的理由のみで事業に関連性を持たせ、必要経費に該当すると判断したにすぎず、客観的にみて事業遂行上必要なものであるかが明らかでなく、通常の家族旅行との相違点も認められないため、家事上の経費と判断するのが相当である。
なんとも判断のしどころが微妙です。
しかし、次の点を気をつけないと認められない可能性があると読み取れます。
- ある程度時期と場所が毎年決まっている。
- 保養的な意味合いが強い。
- 家族だけの場合には頻繁に個人的に同レベルの旅行をしている。
そんな感じでしょうか?
とくに2番と3番ですね。
この事例だけでは詳しくわかりませんが、どうやら専従者は配偶者だけであるようです。
それにもかかわらず、さらに従業員でない「子女の都合・同伴」であれば、単純にそれは家族旅行とみなされるのでしょうね。
経費に計上するためのポイント!
おそらく会計事務所さんにアドバイスを貰う場合、頻度や場所、実態を聞いて判断すると思われます。
そのときに、次のポイントは絶対に外さない方が良いでしょう。
- 旅行の期間が4泊5日以内であること。
- 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
- 金額的の目安としては一人当たり10万円程度までであること。
余裕資金が溜まったので派手な海外旅行をした場合、福利厚生費として認められなかった裁決があるので気をつけて下さい。
最後に、役員だけ慰安旅行は除外項目であるとされていますが、単に従業員を雇う余裕が無いなどの問題から、小規模の場合には役員だけの法人もあると思います。その場合には認められても良いと考えられるでしょう。