森博嗣といえば、ミステリ好きなら誰もが知っているような有名作家ですね。
小説家自らが小説家とは何ぞや、出版業界の今後にまで触れた注目の一冊です。
著者紹介【森博嗣】
某国立大学の工学部助教授の傍ら1996年、『すべてがFになる』(講談社文庫)で第1回メフィスト賞を受賞。犀川助教授・西之園萌絵のS&Mシリーズなどが有名です。
その他、エッセイ、共作での絵本、庭園鉄道敷設レポートなど様々な執筆をしている異色の作家です。
ビジネスとしての小説家
知っている人は知っていると思いますが、著者が小説家になった経緯は「必要に迫られて収入を得るため」です。
何も小説家に憧れがあったわけでも、小説が特別好きなわけでもありませんでした。
まさにビジネスとしての小説家です。
そのため、数々の戦略や計画を前もって立てて執筆をしています。
一例として
・読者が求めているものを書く
・小説の市場規模を考えるならシリーズ化が良い
・シリーズ化するなら徐々に趣向を凝らして引き付ける。
などを挙げています。
その他にもユーザーを分析するなど、かなり経営的な戦略が取られています。著者曰く、ビジネスなら当たり前のことなのに小説業界では足りていないようです。
ただし、本書の出版時が2010年ですので、恐らく今は改善されている点も多いとは思います。
ビジネスとしての小説業界
本書では、出版業界や小説業界の慣習などにも切り込んでいます。
衝撃的なものでは「小説の単行本は『発売日』というものがぎりぎりまで決まっていない」や。「本が出たあとに契約書が送られてきて、『捺印をして下さい』」という事があったようです。
ビジネスの世界なら当たり前に行われている「商談」が、出版業界では行われていない事を指摘しています。
また、本の印税を0%にして安くしたらそれだけ売れるかという実験もしています。
なかなか刺激的な実験を他にもしており、出版業界の裏表が書かれていて大変面白いです。
おわりに
最後に本書に興味がある方は「小説が好き」「小説家になりたい」という人が多いかと思います。
そんな小説好きに送る一節を引用しました。
小説の存在理由は、「言葉だけで簡単に片づけられない」ことを、「言葉を尽くして」表現するという矛盾にあり、その矛盾に対する苦悩の痕跡にある。
カッコイイですね!
いまはYouTubeなど映像で表現する方法が流行りとなってますが、これぞ小説の醍醐味という一節です。
小説家「森博嗣」に興味がある人、小説が好きな人、出版業界に興味がある人のおすすめの一冊です。