多くの本を読んでいると、自然と自分も物を書きたくなってくる。
世の中には情報が溢れ、雑誌やネットにもエッセイやコラムが大量に存在する。
そして、コラムニスト、エッセイストという職業がある。
そんな中で、有名なコラムニストと有名なエッセイスト、エッセイ初挑戦の著作を一つずつ紹介していきたいと思う。
小田嶋隆のコラム道
著者は1956年生まれ。1988年にコンピュータ関連のコラム集『我が心はICにあらず』を著し、以降様々な事物を論じるコラムニストとなる。
本書は、ベテランコラムニストがコラムとは何ぞやと、コラムの楽しさ、コラムを書く心構えを記したものである。
コラムとは規格品であってはならないが、枠組みはあるという。
言うなれば、型は存在するが、その型は独自のものでなければ魅力はないのだ。
内容、文体、視点、あるいは結論の投げ出し方や論理展開の突飛さでも良い。とにかく、どこかに「当たり前でない」部分を持っていないと
コラムニストが問題としているのは、主題そのものでなくて、与えられた主題をどのように料理するかという、調理手順だからだ。
意識的に当たり障りのないつまらない文章を書いてしまうときは、少しだけここに立ち戻って考えたい。
極論ばかりで注目を集めるのは好きではないが、当たり障りのない文章では誰も読まないのだ。
誰でもブログやSNSで発信できる時代、書きたいけど何か定まらない、そんな人の助けになる一冊。
・書籍情報
『小田嶋隆のコラム道』
小田嶋隆(ミシマ社)
デラックスじゃない
今やテレビで見ない日はないマツコ・デラックス。
しかし、本来の世に出るきっかけとなる仕事はコラムニストである。
本書は2014年〜2016年に連載していたものを加筆修正した現状分析と人生振り返りコラムとなっている。
テレビの印象は、独特の立場から舌鋒鋭いご意見番のようなスタイルであろう。
ところが、本書を読むと自己分析に長け、仁義に厚く、自分が求められている偶像を演じる驚くべき繊細なマツコ・デラックスがそこにいた。
また、トーク中に時折出てくる地理やマニアックな知識に教養を感じていたが、オタク気質な一面もこれを読むとわかる。
独特の立ち位置にいるのに何故か共感できてしまうのは、本書を読むとデラックスじゃないマツコの寂しさを感じ取れるからかもしれない。
・書籍情報
『デラックスじゃない』
マツコ・デラックス(双葉文庫)
僕の人生には事件が起きない
ハライチ岩井、初のエッセイ集。ハライチ岩井といえば独特の個性を感じるキャラクターのように思うが、その日常は当たり前だが至って普通。岩井の手にかかれば、誰もが過ごしている日常もクスッとする出来事になる。
棚を組み立てた話、コーヒーマシンの話、脱出ゲームに参加した話、家族喧嘩の話、もちろん芸能人らしいエピソードもあるが、本当に誰にでもある日常をエッセイとして膨らませている。
肩の力を抜いて楽しんでみれば、きっと自分の日常にも同じような出来事が隠されているのに気がつくはず。
・書籍情報
『僕の人生には事件が起きない』
岩井勇気(新潮社)
おわりに
『小田嶋隆のコラム道』でコラムとはなんぞやを学び、『デラックスじゃない』で独特のキャラクターによるエッセイの魅力を感じ取り、『僕の人生には事件が起きない』でありふれた日常も視点次第で魅力あるエピソードに膨らむという、3つの構成で紹介してみた。
芸能人は既にキャラ立ちしているので参考にならないと思うかもしれないが、今はネットで誰でも書き手になり繋がれる時代だ。
コツコツと発信していくことで、どこかでファンができるかもしれないし、何かのきっかけで一気に広がるかもしれない。
炎上騒ぎは御免だが、自分を発信する楽しみは見つけたいと思う。