2024年度前半をめどに刷新される新1万円札の肖像画に選ばれた渋沢栄一。
「日本の資本主義の父」と呼ばれ経済関連のイメージが大変強い渋沢栄一ですが、実は論語に対し、深い見識を持っていたとされています。
「日本の資本主義の父」と呼ばれている渋沢栄一がどのように「論語」を捉えていたのか気になりますよね。
ここでは改めて渋沢栄一について学ぶとともに、論語が何故いま必要か考えてみましょう。
「渋沢栄一」とは
1840(天保11)年2月13日に、現在の埼玉県深谷市にあたる場所で豪農の子として生まれる。
20歳前後が幕末の動乱期にあたり、江戸に遊学した際、尊王攘夷論に傾倒する。
高崎城乗っ取り計画を立てるも従兄弟の説得より中止、郷里を離れ、江戸遊学の折より交際のあった一橋家家臣・平岡円四郎の推挙により一橋慶喜に仕えることになる。
27歳の時、15代将軍となった徳川慶喜の実弟・後の水戸藩主、徳川昭武に随行し、1867年パリの万国博覧会を見学するほか欧州諸国の実情を見聞し、先進諸国の社会の内情に広く通ずる。
明治維新となり欧州から帰国すると、1869(明治2)年に大蔵省に入省、度量衡の制定や国立銀行条例制定に携わった。1873(明治6)年に大蔵省を辞した後は、官僚時代に設立を指導した「第一国立銀行」(現在のみずほ銀行)の総監役(後に頭取)に就任。
第一国立銀行を拠点に、現在にも残る数多くの大企業の株式会社組織の創設 ・育成に力を入れ、生涯に約500もの企業に関わったといわれている。晩年は社会・教育・文化事業に力を注ぎ、東京高等商業(現在の一橋大学)等の設立に関わり、1931(昭和6)年11月11日、91歳の生涯を閉じた。
渋沢栄一は「道徳経済合一説」を唱えており、1916(大正5)年に「論語と算盤」を著し、幼少期に学んだ『論語』を拠り所に倫理と利益の両立を掲げ、経済を発展させ、利益を独占するのではなく、国全体を豊かにする為に、富は全体で共有するものとして社会に還元することを説くと同時に自身にも心がけた。
本書の特徴
本書は、渋沢栄一が幼少期より学び生涯の行動基準とした「論語」について著した「論語講義」を要約したものです。
編者の竹内均は東京大学名誉教授の理学博士で、科学雑誌「ニュートン」の初代編集長を勤めたほか、数多くの書物を遺し(約450冊)、また小松左京の著作『日本沈没』の原作執筆ブレーンをするなど科学と教育に関してマルチな活躍をされた方です。
渋沢栄一なりに解説した論語を、さらに編者がまとめたものとなると、元の論語と違う感覚があるかもしれませんが、論語の導入本として渋沢栄一の考え方を学ぶ上では良い一冊だと思います。
なぜ、論語が必要か
孔子と彼の高弟の言行を孔子の死後、弟子達が記録した書物です。
『孟子』『大学』『中庸』と併せて朱子学における「四書」の1つに数えられており、中国の官僚登用試験である科挙の出題項目にもなっていました。
論語は2000年以上前に書かれたものです。
それが何故現代にも残っているのか、これは古典全てに通ずるものですが、いつまでも人々の共感を呼び、不変の人間性が書かれているからではないでしょうか。
論語は道徳が中心です。
道徳とは「生き方の指針」「倫理的な価値観」のことです。
現在のような個人が尊重される時代には、誰かに生き方や価値観を押し付けられる事は減りました。
しかし、一方でつらいことがあっても自分で考えて乗り越えなければいけません。
そこで「論語」を代表するような古典を読み、自分なりの「生き方の指針」を身に付け、ブレない自己を確立する必要があるのではないでしょうか。