青色専従者って知っていますか?
簡単に説明すると個人事業者でも家族に給料を払って経費にする方法があるのです。
しかし、これには要件があり、また限度を超えると調査で認められず否認されてしまいます。一体、どのぐらいなら経費に計上できるのでしょうか。
専従者給与って何?
まず、家族に給料を払って経費にするために、どうような手続などが必要でしょうか。
疑問にあがるようなポイントを取り上げたいと思います。
Q1.専従者の要件
家族に給料を払って経費にするには、その事業者が青色申告でも白色申告でもできますが(白色の場合は専従者控除という)、ここではより有利な青色申告の専従者給与について説明します。
まず、当然事業者が青色申告の届出をしている必要があります。
その上で、青色事業専従者になるには以下の要件に該当する必要があります。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
- 年に6ヵ月(もしくは事業の期間の2分の1)を超えて、青色申告者の事業に専ら従事していること
Q2.学生の子供に給料を払いたい
基本的に、15歳以上であっても高校生や大学生は、学生という職業区分があり、事業に専念していると言えないため専従者にはなれません。
Q3.何人まで専従者にしていい?
個人事業主と生計を一にする配偶者その他の親族ならば制限はありません。
現実的な最大は、事業主の妻、同居の祖父母、父母、無職の兄弟姉妹といったところでしょうか。
頑張れば6人ぐらい専従者になれそうですね。
よほど売上の大きな事業でなければ難しいでしょうけど。
なお、専従者となった場合には、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
Q4.未払いだけど経費にしていい?
支払いを受けたときとされているため、未払いの期間が続く場合には認められません。
ただし、数日の誤差などは大丈夫です。
Q5.専従者だけどパートやアルバイトをしていい?
原則、パートやアルバイトをしていると専従者として認められません。
ただし、条文を読み解くと「年に6ヶ月を超える期間」を専従者として働き、その残りの時間にパートをしている分には、認められそうですね。
事業に「専念」しなければいけないので、専従者給与より多い金額や多い時間を働いたり、実質的に専従者として働いてないとわかれば否認されるでしょう。
Q6.専従者給与はどのくらい払っていいの?
これについて、専従者給与として支払ったものの、調査により不相当に高額だとして必要経費に算入する事が出来ないとした裁決があります。
どの程度の給与の支払ならば認められるか、具体的事例から検討してみましょう。
青色専従者給与が不相当に高額だとして必要経費に算入することは出来ないとした事例
事案の概要と納税者の主張
税理士が青色事業専従者の妻に支払った青色事業専従者給与の額が適正な額か否かの判断が争われた審査請求事案で、国税不服審判所は、妻と使用人との労務提供の程度の差違を前提に検討すると著しく高額であり、適正給与相当額を上回る部分の金額は事業所得の計算上必要経費に算入することはできないと判断して、審査請求を棄却した。
(平成25年5月29日裁決)
今回の事例は、旦那さんが所長、奥さんが副所長の会計事務所です。
青色事業専従者の給与の金額は身内だから、ついつい甘くしてしまい高額に設定してしまうことはよくあります。
それでは、いくらが不相当な金額にあたるのか、納税者と課税庁の双方の主張を見てみましょう。
納税者は、以下のような主張をしています。
妻Mは税務及び会計業務に30年以上従事しているベテラン職員であると同時に、本件事務所の副所長として、本件各使用人を管理する立場にあるとともに、本件事務所の財務管理の責任者でもあるなど、請求人の事業経営に深く関与しているから、妻Mの労務の性質は本件各使用人のそれと比較して大きな差異がある。
30年以上のベテラン職員で副所長の立場にあるために、高額な給与を払っているのだとしています。
勤続年数と役職により高額な給与を払っている。一見すると何も問題の無いように見えます。いったい、どうして不相当に高額だと判断されたのでしょうか。
裁決
原処分庁は、青色専従者給与の金額を次の方法により算出を求めました。
・給与比準方式
(この事務所の各使用人の平均を勘案して算出)
・類似同業専従者給与比準方式
(近隣で同規模程度の事務所の専従者給与を勘案して算出)
そして、給与比準方式が採用し、以下の判断を下しました。
資格を有する税理士が営む税理士業において、資格のない者が提供する労務は、税理士が資格に基づき行う業務の補助業務又は税理士業務に付随する業務であり、いずれにせよ資格のない者が提供する各労務の性質は税理士業務の補助であるとみるべきところ、上記(イ)のAのとおり、妻Mの労務の性質はいずれも税理士業務の補助であると認められ、また、請求人がその主張の根拠とする妻Mの従事年数及び副所長の肩書は、資格を有する税理士が営む税理士業において資格のない者が提供する労務の性質を左右するものではないから、これらを根拠として妻Mの労務の性質を本件各使用人のそれと比較して大きな差異がある旨の主張は相当ではない。
資格が無い奴は、肩書きが何であろうと仕事に大差はない!
資格が無ければ副所長といっても他の従業員と比較して特段業務の性質に差がないと、厳しい意見で跳ね除けています。
あくまで勤続年数の昇給と勤務時間で判断し、職員の性質はみな一律であるとしています。
これが意味する事は、税理士事務所内において資格を有する税理士のみが特段の業務であるということです。
なお、具体的な基準は事務所内で勤続年数が最も長い(17年3ヶ月)のPの給与として、それに勤務時間と連動していると認められるパソコンのログ記録からPの1.36倍の時間を起動していたとして、1.36を掛けた金額を適正な給与としています。
これにより、給与の額は
平成20年 11,600,000円 ⇒ 6,202,960円
平成21年 10,000,000円 ⇒ 6,260,760円
平成22年 10,000,000円 ⇒ 6,071,040円
と決定されました。
う~ん、17年のPと30年の妻Mの差、13年間の昇給率はどこに?
貰いすぎと言えば貰いすぎでしょうけど、勤務実績もあり事実を伴っている割には厳しい裁決となりました。
専従者給与の金額を決定するときは、なるべく常識の範囲内で根拠のできる金額に設定しましょう。と言うしかありませんね。
「奥さんにも同じだけ渡してあげよう」なんて、うっかり事業主の取り分と変わらない給与体系にしてしまうと否認される可能性大です。